講座開催レポート

講座

NEW 利他とは何か? 伊藤 亜紗 2026年2月8日

日曜講座 「日常の中で生きる/活かされるイエスの教え―再考・愛―」
第2回 利他とは何か?
日時:2026年2月8日 14時~16時
講師:伊藤 亜紗(東京科学大学教授)

 

 「美学」が専門ですが、これは人文系、哲学の一分野で言葉を使って色々考える。問を言葉でたてる。利他は利己の対義語としてあり、利他と思ってやっていたことが利己になる。表裏反転ではないのか。利他はあっという間に病的になる。相手のためにやるということが自分を犠牲にすることで相手が利する。自己を無くして相手に奉仕しようという病的利他になる。その極端な例は自爆テロ。また、感情に左右される利他を良しとせず、数値化することによって利他の効果を大きくしようとする効果的利他主義がある。寄付先の効果的な数字をウエッブサイトで確認したり、個人的つながりにだけ限定する傾向がある。数値化することによって本当の利他心を無くす。例えば託児所が6時お迎えルールがあっても間に合わず、申し訳なさを言葉や態度で伝えるが、遅刻ルールができて罰金制度を導入するとお金で解決すればいいというサービス対価意識になり仲間意識がなくなる。
また、偏差値一強主義で共通テストの数値に注力することによって学校の芸術分野をやめ、障害者を排除することも起きる。

利他が病的にならないためには?
*利他が相手をコントロールしてはいけない。
若年性認知症の方に100%周りがサポートする。大変だから代わりにやってあげることによって当事者を最初からできない人に認定してしまう。
全盲の人に対してまわりの介護者が代わりに連れて行く。善意なので断れないが自分で行く先をきめられないバスに乗っているような感じになる。
障害のある人は障害者を演じてしまう。もちろん全くサポートするなと言ってない。
*利他の毒
アルセス・モースという人類学者は贈り物(GIFT)をするということは人をコントロールすることで、お返しができないと上下関係ができる。

では、どうしたらよいのか?
*もれる利他
もれたもの。与えたつもりがないものは病的、毒の部分がない。与えていないのに利他という自然の関係。ルノワールの「木漏れ日」の絵のように。

未来食堂の取組み
*ただめし券
未来食堂には「まかない」と「ただめし」という大きく二本の柱があります。まかないというのは未来食堂で50分働くと1食分無料でご飯が食べられるという仕組みです。お金のない人も「まかない」という仕組みで誰でもが受け入れられる場所を作ることができます。
それは、食堂の入り口に「ただめし券」というのが貼ってあって、それを剥がして持ってくるとタダでご飯が食べられるというシステムです。直接誰かに食券をあげるわけでなく、宛先が分からない。また、「未来食堂」は意図的に無愛想な雰囲気で、あまり暖かい雰囲気にするとその場に馴染む人だけになって、そうじゃない人が入りにくくならないように。食券を使って食べる人が本当に困っている人でなくていい。困った人にだけだと相手を選別しその人をジャッジすることになる。人を助けるということは難しいことです。良し悪しの物差しで測ろうとする自分が出てくる。ただめし券をどういう人が使っているかをあえて意識しないようにする。「こういう人に使ってほしい」と思う人ほど危うい。
この店を始めた小林せいかさんは東工大理学部数学科卒、IBMエンジニア出身。

*奈良県チロル堂の取組み
駄菓子屋チロル堂にはガチャガチャがあって子供たちは\100入れるとカプセルの中にはチロル札が入っている。それは1枚と限らないときがあり、ポテトフライやカレーを食べることができる。チロル堂の奥は夜には居酒屋になって、大人たちの飲食代の一部がチロル札となる。この発案者は自分が小学生だったら知らないおばさんに『大変だったね』とか話しかけられるぐらいなら一人で食べたいと思ったことだった。与えられる側はかわいそうな人というレッテルを張られる。ギフトという意味には「贈り物」というだけでなく「毒」という意味もある。ガチャガチャで偶然自分で手に入れるという構造がギフトの毒を解毒する。

新しい贈与論
寄附の仕方;会員は毎月会費を払う。\500、\1,000をまとめてテーマを決め、みんなで寄付先を決めて寄付をする。候補を3つ挙げて会員全員が投票。それによって寄附先にと自分が思っていたところに行かない経験。自分の価値観を強化できず新しい支援先を知って自分の考えが払拭されて新しい学びを得る経験ができる。一般的寄附が投資化して相手を育てるためにやっているがお金は流動的。必要としている人が使う。
自分の共感の外側にでることができる。様々な寄附のやり方があり、偶然を巻き込む利他がある。

次回は
3/22 川崎 千里(Facultés Loyola Paris哲学部博士課程)アウグスティヌスにおける愛-哲学的視点から―

画像をクリックするとお申込み・詳細ページが表示されます。